2023.07.03
自分の気持ちを整えて、相手の気持ちに思いを馳せる。 イラストレーター・せいのちさとの日常の中でのときめきの発見と生み出し方

せいのちさとさんは、つい見入ってしまうような色鉛筆の心地よいタッチが魅力的なイラストレーター。個性的かつ繊細な作風は、雑貨屋さんでお気に入りをみつけたときのワクワク感やときめき、絵本を読んでいるような物語性を感じます。今回5周年の節目となるイラストをせいのさんにお願いしました。
見ている人を心地よくさせてくれる作品を具現化するための、「ときめきの発見と生み出し方」や、5周年記念のテーマでもある「感謝」について、クリエイターであるせいのさんならではの視点でお話しいただきました。
自分の「好き」、常に挑戦する気持ちを忘れずに
イラストレーターになる前は、中学校の美術教員をされていたと伺いました。どのような経緯でイラストレーターに転身されたのでしょうか?

せいのさん
せいのさん
武蔵野美術大学に進学し日本画を専攻していました。卒業後は画家やデザイン関係に憧れはあったものの、それで生計を立てていけるイメージが湧かず、大多数の学生が進路として選ぶ美術教員の道を選びました。
仕事自体は楽しかったのですが、自分は教員としての資質がないのではないか?と日々悩みの連続でした。何より生徒たちが楽しそうに絵を描いている姿を見ていると「羨ましい」と感じる気持ちが日に日に強くなっていって…。
そんなとき、あるアーティストの方の美術教員向けの講習を受ける機会があったんです。
アーティストの方が自分自身や作品について語っている姿を見て、「羨ましい。なぜ私は今作品を作っていないんだろう?」と悔しくて涙が出てきました。悩んだ末に当時付き合っていた夫に「私、本当は絵を描きたいんだ。」と告白したら、「描いていいんだよ。」と。その言葉がきっかけで、教えるというより自分が作っていく方に人生を変えていこうと決意して、イラストレーターとしての道を歩み始めました。

たくさん葛藤して決めた道なんですね。現在では多くのお仕事をされていると思いますが、特に力を入れて取り組んでいることはありますか?

せいのさん
せいのさん
どんなお仕事でも、依頼内容そのままではなくプラスアルファで自分が挑戦してみたいことを取り入れるようにしてます。そうすることで少しずつ自分のスキルやセンスが上がっていく気がして、楽しみながら仕事に取り組むことができています。
今回のsalisty5周年記念のイラストは、私にとってメイン級の仕事でした。初めから「この部分はせいのさんの持ち味を活かしたいので、せいのさんのセンスにお任せしたいと思ってます。」という言葉をいただき、私の可能性を見てくださっているようでとても嬉しかったです。他の仕事ではできないことをsalistyの制作の中で挑戦できていて、かなり自由にやらせていただいています。自分にできる最高の作品を今回の5周年記念のイラストに捧げられたらいいなと全力で制作に取り組みました。
何気ない日常に、ときめきは潜んでいる
作風だけでなくモチーフ選びにもユーモアや独自のセンスを感じます。イラスト制作をする上でインスピレーションの元となるものをどのように発見していますか?

せいのさん
せいのさん
日常の中で面白いと思った形や色を見つけたら、できるだけ写真に撮っておくようにしています。
埼玉の自然豊かな場所に住んでいるため、散歩の時には面白い形や色をした植物に惹かれることが多いですね。散歩中にいいアイデアを思いつくことが多いので、できるだけ時間を確保するように心掛けてます。
せいのさんにご提供いただいた写真。人工物で惹かれるのは、狙ってないのに格好いいと感じるもの。見つけるとグッとくるとのこと。
見ている視点が面白くて、とても興味深いです。そんなせいのさんが最近一番ときめいた出来事を教えてください。

せいのさん
せいのさん
ある時近所の河原に30羽くらいのカモの群れがいて、乾燥してひび割れた地面に生えている苔を一心不乱に食べていたんです。周りを気にせず一生懸命食べる様子がとても可愛く、力強い生命力を感じてキュンとしましたね。

「たまに一羽が顔を上げて鳴くと伝染したように、周りも鳴き始めるんです」とその時の様子を細かく説明してくれるせいのさん。

当時の様子を描いていただきました。
集中力が必要な仕事だから、心の余裕はちゃんと確保する
アナログかつ繊細なタッチで描かれているので集中力が必要な作業かと思います。心の余裕を確保するために、普段から心掛けていることはありますか?

せいのさん
せいのさん
休憩時間にかわいい動物の写真や動画を眺めたり、ぬいぐるみを撫でたりして癒されています。特に、とぼけた顔をした動物やぬいぐるみに惹かれます(笑)。

せいのさんを癒すぬいぐるみたち。左から、もぐら、あざらし、鳩。

せいのさん
せいのさん
色見本で好きな色の組み合わせを作って眺めている時間も癒しです。この「フランスの伝統色」の色見本は見ていると本当にうっとりします。色の名前も「ルイ14世が愛用したブルー」「ブルゴーニュワインの色」など変わった名前も多く面白いですよ。

特にせいのさんがお気に入りの色。パキッとした色使いが好きなのだとか。
『フランスの伝統色』DICカラーデザイン株式会社

せいのさん
せいのさん
他にもパリのお店がたくさん掲載されている旅行雑誌を見て、作品作りの参考にしたりしています。見ているだけでもとても楽しいです。こういう何気ない時間の中にインスピレーションがあったり、心の平常心を保ってくれます。
気分が落ち込んだときはどのように過ごしていますか?

せいのさん
せいのさん
ノートに今感じていることを書いて気持ちの整理をするようにしています。いわゆるジャーナリングですね。このときは気持ちをイラストではなく言葉にして、自分や物事を客観視するようにしています。
あとは好きな香りを嗅いで気分転換をしています。お風呂に好きな香りのアロマオイルを垂らしてゆっくり浸かったり、仕事の合間に好きな香りのバームを塗ってみたり。バームは材料さえあれば自分でも作れるので、好きな香りを配合して癒されています。

左:せいのさん手作りのバーム 右:フレーバーライフエッセンシャルオイル
表面的に見えているものが全てではない。内に秘めた相手の気持ちに想いを馳せる。
せいのさんの感謝を伝えたい人、エピソードなどはありますか?

せいのさん
せいのさん
夫ですね。うまくいっているときは喜んでくれるし、うまくいっていないときは話を聞いて励ましてくれます。
過去に何事もうまくいかず、ずっと落ち込んで、人にも優しくできなかった時期があったんです。自分に余裕がないため夫にもついついマイナスな言葉を投げかけてしまうこともありました。そんなときも夫はいつも「何が辛いんだろう?」と考えて対応してくれるんです。そんな夫が側に居てくれたことで「自分にもいいところがあるのかもしれない」と思えるようになりました。同時に、自分もそんな風に誰かが辛い状況に置かれているとき、その時投げかけられた言葉だけでなく、今相手が抱えている状況や気持ちの面をみるようにしています。そういった気づきをくれた夫にはとても感謝しています。
素敵なお話ですね。せいのさんが感謝を伝える際に意識していることはありますか?

せいのさん
せいのさん
感謝を伝えるときに、どんな言葉が自分にとって嬉しかったか、ありがたかったかというのを具体的に伝えるようにしています。例えば取引先の方が、こちらが仕事を進めやすいようにスムーズな段取りをとってくれていたとしたら、きっとこちらの仕事のことを考えて沢山の準備をしてくれたと思うんです。そういったところに想いを馳せて、「事前の準備をきちんとやっていただいてありがとうございました。」のように相手の状況を想像をして感謝を伝えるようにしています。

具体的な言葉を添えると、より感謝の気持ちが伝わりそうですね。せいのさんが感謝を伝えてもらって嬉しかったことはありますか?

せいのさん
せいのさん
仕事では当然、依頼主さんに満足してもらう事や結果を出さなければいけません。表現に悩んだり、試行錯誤の連続の中で完成させていくことがほとんどです。そんな過程を経て取り組んだ仕事の後に、「この結果を出すためには、こういうことをやる必要があったよね。大変だったよね。ありがとう。」と一声かけてもらえると、頑張って取り組んで本当によかったな、この仕事が出来て良かったなと思えますね。
絆を育む上で大切にしていることはありますか?

せいのさん
せいのさん
相手との関係や、お互いの人生がうまくいかなくなったときに、いかに相手の立場に立って物事を考えられるかが大事だと思います。相手がマイナスな言葉を投げかけてきた時に、この人はどうしてこういう発言をするのだろう?と一度考えてみる。その場ですぐマイナスな言葉や怒りで返すのではなく、一呼吸置いて相手を思いやることを大切にしています。そのために、日々の中で自分の状態をできるだけプラスな状態にしていく努力も必要です。自分の状態を常に整えておくことで、相手とどのような関係になったとしても相手のことを思いやる事ができると思います。

この記事を書いた人:
salisty運営チーム かげ(クリエイティブ担当)
日常の中で、人とは少し異なった面白みを見出したり、相手に寄り添って対話をしたり。インタビューを通して、せいのさんの繊細でユニークなお人柄を感じることができました。改めて、今回はsalisty5周年のイラストを制作いただき、ありがとうございました!
キレイ、をつたえる手もとに
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